『源氏物語』桐壺の巻、「前の世にも御契りや深かりけむ」から「思ほしかしづき給ふこと限りなし」までの現代語訳・品詞分解・敬語・解説です。桐壺②「上達部、上人なども」の続きで、光源氏が誕生する場面です。
原文の読み方
原文の一語一語に、活用や助動詞・助詞の意味を示しています。緑の下線は敬語です。下のボタンで、用言・助動詞・助詞などのラベルを別々に出したり消したりできます。ラベルを押すと古典文法一覧の説明に飛びます。
現代語訳・品詞分解・解説
若宮の誕生
現代語訳前世でもご宿縁が深かったのだろうか、この世にまたとないほど美しい玉のような男皇子までお生まれになった。
- 前の世
- 前世。
- 御契り
- ご宿縁。前世からの約束。
- さへ
- 〜までも。帝の寵愛に加えて、美しい皇子までも、ということ。
「御契りや深かりけむ」は、帝と更衣の前世からの縁を語り手が推測した言い方(草子地)。
「清らなる玉の」は、この上ない美しさをたたえる言い方。玉のように美しい男皇子として、光源氏の並はずれた美しさを印象づけている。
現代語訳帝は早く(若宮に会いたい)と待ち遠しくお思いになり、急いで宮中に呼び寄せてご覧になると、またとないほど美しい子のお顔立ちである。
- いつしか
- 早く(〜したい)。
- 心もとながる
- 待ち遠しく思う。
- 珍かなり
- めったにないほどすばらしい。
「心もとながらせ給ひ」の「せ」は尊敬、「参らせて」の「せ」は使役(帝が若宮を宮中に参上させた)。
「いつしかと心もとながらせ給ひ」の主語は帝。生まれた若宮に早く会いたいと待ち遠しく思い、急いで宮中に参上させてご覧になる。
第一皇子と若宮
現代語訳第一皇子は右大臣の女御を母とし、後ろ盾も有力で、「疑いなく皇太子となる君」として世間でも大切にお世話申し上げているが、
- 御腹
- お生みになった子、ということ。
- 寄せ
- 後ろ盾。後援。
- まうけの君
- 皇太子となるはずの方。
- もてかしづく
- 大切に扱う。
第一皇子は右大臣の娘(弘徽殿の女御)の子で、後ろ盾が強く、皇太子になると見られている。
「疑ひなきまうけの君」は、第一皇子が間違いなく皇太子になるはずの方だということ。
「もてかしづききこゆれ」の主語は世間の人々。「きこゆ」は謙譲語で、大切にお世話される第一皇子への敬意。
現代語訳この若宮のお美しさには並びようもなかったので、
- 御にほひ
- この皇子(光源氏)のお美しさ。
「この御にほひ」は若宮(光源氏)の美しさ。ここの「にほひ」は、においではなく、目に見える照り映えるような美しさ。
「並び給ふべくもあらざりければ」の主語は第一皇子。第一皇子でさえ、若宮の美しさには並ぶことができそうもなかった。
現代語訳帝は第一皇子を通りいっぺんに大切な方とお思いになるだけで、この若宮のほうを、自分だけの宝物のように思って、限りなく大切にお育てになる。
- おほかた
- 通りいっぺん。一般的。
- 君
- この若宮(光源氏)。
- わたくしもの
- 自分だけの秘蔵の宝。
- かしづく
- 大切に育てる。
帝は第一皇子を通りいっぺんに大切に思うだけで、若宮を「わたくしもの」として大切にする。
「この君」は若宮(光源氏)。第一皇子への「おほかたの」(ひととおりの)大切さと、若宮への「わたくしもの」(秘蔵の子)としての愛情が対比されている。
テスト予想問題
A 読み・語句
「清らなり」「珍かなり」「寄せ」「にほひ」「かしづく」の意味をそれぞれ答えよ。
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清らなり=美しい。珍かなり=めったにないほどすばらしい。寄せ=後ろ盾・後援。にほひ=(目に見える)美しさ。かしづく=大切に育てる。
「いつしかと心もとながらせ給ひて」を、主語を補って現代語訳せよ。
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(帝は、若宮に)早く会いたいと待ち遠しくお思いになって
B 文法・敬語
次の【 】内の「せ」を、それぞれ文法的に説明せよ。
①心もとながら【せ】給ひて
②急ぎ参ら【せ】て解答を見る
①尊敬の助動詞「す」の連用形。「せ給ふ」で帝への最高敬語。
②使役の助動詞「す」の連用形。帝が若宮を参上させる。次の【 】内の助動詞について、意味と活用形を答えよ。
①御契りや深かり【けむ】
②男皇子さへ生まれ給ひ【ぬ】
③御容貌【なり】
④並び給ふ【べく】もあらざりければ
⑤御腹【に】て解答を見る
①過去の原因推量・連体形(「や」の結び)
②完了・終止形
③断定・終止形
④可能・連用形
⑤断定・連用形「玉の男皇子さへ」の「さへ」の意味を答えよ。また、何に加えて「さへ」なのか。
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添加(〜までも)。帝の深い寵愛を受けていることに加えて、美しい皇子までも生まれた、ということ。
次の敬語について、種類(尊敬・謙譲)と、誰から誰への敬意かを答えよ。
①急ぎ参らせて
②御覧ずるに
③もてかしづききこゆれど
④並び給ふべくも
⑤思ほしかしづき給ふ解答を見る
①謙譲・語り手から帝へ
②尊敬・語り手から帝へ
③謙譲・語り手から一の皇子へ
④尊敬・語り手から一の皇子へ
⑤尊敬(「思ほし」「給ふ」とも)・語り手から帝へ
C 現代語訳・内容
「前の世にも御契りや深かりけむ」を現代語訳せよ。
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前世でも(帝と更衣の)ご宿縁が深かったのであろうか
「疑ひなきまうけの君」とは、誰が、どうなることか。
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第一皇子が、間違いなく皇太子になるということ。
「おほかたのやむごとなき御思ひにて」を、誰の誰に対する思いかがわかるように現代語訳せよ。
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帝は第一皇子に対しては通りいっぺんの大切なお気持ちで
「この君をば、わたくしものに思ほしかしづき給ふこと限りなし」の「この君」は誰か。また、現代語訳せよ。
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「この君」=若宮(光源氏)。訳=この若宮のほうを、自分だけの宝物として大切にお育てになることこの上ない。