『源氏物語』若菜上(女三の宮の降嫁)② 現代語訳・品詞分解・敬語・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 原文の読み方
  2. 現代語訳・品詞分解・解説
  3. 自分を責める光源氏
  4. 紫の上の歌と光源氏の歌
  5. テスト予想問題

『源氏物語(げんじものがたり)』若菜上(わかなじょう)の巻、「女三の宮の降嫁(おんなさんのみやのこうか)」の場面の中ほど、「三日がほどは、夜離れなく渡り給ふを」から「いとただにはあらずかし」までの現代語訳・品詞分解・敬語・解説です(全3回の②)。若菜上①の続きです。

当時の結婚では、夫は三日続けて妻のもとに通うのが決まりでした。婚儀の三日間、光源氏は毎晩女三の宮のもとへ出かけます。三日目の夜、紫の上に許しを求める光源氏と、ほほえみながらも歌に嘆きをこめる紫の上のやりとりが描かれます。

原文の読み方

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現代語訳・品詞分解・解説

自分を責める光源氏

原文
三日みかが格助体修ほどは係助区別、夜離よがれなくク連用渡りラ四連用給ふ補・ハ四終止尊→光源氏を接助順接確定、年としごろさ副も係助強意ならひハ四連用給は補・ハ四未然尊→紫の上ぬ打消連体心地に格助状態、忍しのぶれバ上二已然ど接助逆接確定、なほ副ものあはれなりナリ終止。

現代語訳(婚礼の)三日間というもの、(光源氏が女三の宮のところへ)一晩も欠かさずお出かけになるので、何年もこうした経験のなかった(紫の上の)心には、じっとこらえてはいても、やはりなんとなく悲しい。

夜(よ)離(が)れ
夫が妻のもとへ通わなくなること。
年ごろ
長年。
忍ぶ
こらえる。我慢する。
ものあはれなり
なんとなく悲しい。
解説

「渡り給ふ」の主語は光源氏(女三の宮のもとへ通う)。

「さもならひ給はぬ」の「さ」は、光源氏が自分のもとに通ってこない(夜離れが続く)こと。紫の上はそういう経験に慣れていない。

原文
御衣おほんぞどもなど副助例示、いよいよ副たきしめマ下二未然させ使役連用給ふ補・ハ四連体尊→紫の上ものから接助逆接確定、うちながめマ下二連用て接助単純接続ものしサ変連用給ふ補・ハ四連体尊→紫の上気色けしき、いみじくシク連用らうたげにナリ連用をかしシク終止。

現代語訳(光源氏の)衣装などに、これまで以上に香をたきしめさせなさるけれど、ぼんやりともの思いにふけっておいでの(紫の上の)姿は、ひどくいじらしく魅力的である。

御衣(おんぞ)
お召し物。
たきしむ
香をたいて衣にしみこませる。
うちながむ
もの思いに沈む。
ものす
(ここでは)いる。
解説

香をたきしめさせているのは紫の上。女三の宮のもとへ出かける光源氏の衣を、女房に命じて準備させている。

「うちながめてものし給ふ気色」は、紫の上の心情が表れた部分。

原文
などて副、よろづの格助体修ことありラ変終止とも接助逆接仮定、また副人を格助対象ば係助強意並べバ下二連用て接助単純接続見るマ上一終止べき当然連体ぞ終助強意、

現代語訳(光源氏は思う、)どうして、どんな事情があるにせよ、(紫の上のほかに)また別の人を並べて妻にしなければならないのか、

などて
どうして。
見る
(ここでは)妻とする。
解説

ここから「つらく思し続けらるる」の前までは、光源氏の心の中の言葉。

「などて」は「見るべきぞ」にかかる。「また人をば並べて見る」は、紫の上がいるのに、女三の宮を妻として迎えること。

原文
あだあだしくシク連用心弱くク連用なりおきカ四連用に完了連用ける過去連体わ代名が格助体修怠りに格助原因、かかるラ変連体ことも係助強意出で来いでくるカ変連体ぞ終助強意かし終助念押し、

現代語訳浮気っぽく、気弱になってしまっていた自分の過ちのせいで、このようなことも起こるのだよ、

あだあだし
浮気っぽい。
心弱し
気が弱い。
怠り
過ち。気のゆるみ。
解説

「かかること」は、光源氏が女三の宮と結婚すること。光源氏は、それを自分の浮気心と気の弱さのせいだと考えている。

原文
若けれク已然ど接助逆接確定、中納言ちゆうなごんを格助対象ば係助強意え副思おぼしかけカ下二未然尊→朱雀院ず打消連用なりラ四連用ぬ強意終止めり推定連用し過去連体を間助詠嘆、と格助引用我代名ながら接助逆接確定つらくク連用思し続おぼしつづけカ下二未然尊→光源氏らるる自発連体に接助単純接続、涙ぐまマ四未然れ自発連用て接助単純接続、

現代語訳(中納言は)若いけれど、(朱雀院は)中納言(夕霧)を(婿にとは)お考えになれなかったようなのになあ、と我ながらつらくお思い続けになると、自然と涙ぐまれて、

中納言
光源氏の息子、夕霧。
思しかく
心にかけなさる。
解説

「中納言をばえ思しかけずなりぬめりし」は、朱雀院が、若い夕霧を女三の宮の婿にとはお考えにならなかったようだ、ということ。夕霧が婿になっていれば、自分が引き受けることはなかったという後悔。

原文
「今宵こよひばかり副助限定は係助強意、理ことわりと格助引用許しサ四連用給ひ補・ハ四連用尊→紫の上て強意未然む推量終止な終助念押し。これ代名より格助起点後のちの格助体修とだえあらラ変未然む仮定連体こそ係助強意、身ながら接助逆接確定も係助強意心づきなかるク連体べけれ推量已然。

現代語訳「今夜ばかりは、しかたのないことだと許してくださいますね。この先、あなたのところへ来ない夜があったなら、それこそ自分ながらいやになるでしょう。

理(ことわり)
もっともなこと。道理。
とだえ
(男の)訪れが途絶えること。
心づきなし
気に入らない。いやだ。
解説

「理」は、婚儀の三日目の夜に、女三の宮のもとへ行かなければならないこと。三日目の夜が過ぎて、初めて正式な結婚と認められた。

「とだえあらむこそ」の「む」は仮定。これから先、紫の上のもとに来ない夜があったら、ということ。「こそ」の結びは「べけれ」。

原文
また接さりとて接、か代名の格助体修院に格助主格聞こしめさサ四未然尊→朱雀院む婉曲連体ことよ間助詠嘆。」と格助引用思ひ乱れラ下二連用給へ補・ハ四已然尊→光源氏る存続連体御心みこころの格助体修うち苦しげなりナリ終止。

現代語訳しかしそうかといって、あちらの院(朱雀院)がお聞きになったら(どう思われるか)と思うと。」と思い悩んでいらっしゃるお心の中は、苦しそうである。

さりとて
そうかといって。
聞こしめす
お聞きになる。
解説

「かの院」は朱雀院。「院に」の「に」は、貴人を場所のように表して主語を示している。

紫の上のもとにとどまって女三の宮を大切にしないと、朱雀院が聞いたらどう思われるかと光源氏は気にしている。

紫の上の歌と光源氏の歌

原文
少し副ほほ笑みマ四連用て接助単純接続、「みづからの格助体修御心みこころながら接助逆接確定だに副助類推、え副定めマ下二連用給ふ補・ハ四終止尊→光源氏まじか打消推量連体・音なる推定連体を接助逆接確定、まして副理ことわりも係助並列何代名も係助並列。いづこ代名に格助場所とまるラ四終止べき推量連体に断定連用か係助疑問。」

現代語訳(紫の上は)かすかにほほえんで、「あなたご自身のお心でさえ決めかねていらっしゃるようですもの、なおさら私には、道理も何も(決めようがありません)。どこに落ち着くことやら。」

まして
なおさら。
解説

「少しほほ笑みて」の主語は紫の上。ご自分でも心が決まらないのに、私に許しを求めるのはおかしい、と思っていると考えられる。

「まして理も何も」の後には、「私には決めることなどできません」という意味の言葉が省略されている。

原文
と格助引用、言いふかひなげにナリ連用とりなしサ四連用給へ補・ハ四已然尊→紫の上ば接助順接確定、恥づかしうシク連用・音さへ副助添加おぼえヤ下二連用給ひ補・ハ四連用尊→光源氏て接助単純接続、頰杖つらづゑを格助対象つきカ四連用給ひ補・ハ四連用尊→光源氏て接助単純接続寄り臥よりふしサ四連用給へ補・ハ四已然尊→光源氏れ完了已然ば接助順接確定、硯すずりを格助対象引き寄せサ下二連用て接助単純接続、

現代語訳と、まともに取り合わないふうにあしらいなさるので、(光源氏は)きまりが悪いとまでお感じになり、頰杖をついて物にもたれて横になっておいでになると、(紫の上は)硯を手もとに引き寄せて、

言ふかひなげなり
取り合っても仕方がない様子だ。
とりなす
あしらう。
恥づかし
気恥ずかしい。
寄り臥す
物に寄りかかって横になる。
解説

「恥づかしうさへおぼえ給ひて」の主語は光源氏。自分の迷いを紫の上に見すかされ、あっさりとあしらわれたので、きまり悪く思った。

「硯を引き寄せて」の主語は紫の上。

原文
目に格助場所近くク連用移れラ四已然ば接助順接確定変はるラ四連体世の中よのなかを格助対象行く末ゆくすゑ遠くク連用頼みマ四連用ける詠嘆連体かな終助詠嘆

現代語訳目の前でこんなにも移り変わってしまう二人の仲だったのに、行く末遠くまでと頼りにしていたことよ。

世の中
(ここでは)男女の仲。
解説

紫の上の歌。目の前でこんなにもたやすく変わってしまう二人の仲だったのに、いつまでもと頼りにしていた自分を嘆いている。

原文
古言ふることなど副助例示書きまぜザ下二連用給ふ補・ハ四連体尊→紫の上を格助対象、取りラ四連用て接助単純接続見みマ上一連用給ひ補・ハ四連用尊→光源氏て接助単純接続、はかなきク連体言ことなれ断定已然ど接助逆接確定、げに副、と格助引用理ことわりにナリ連用て接助単純接続、

現代語訳(紫の上が)古歌なども書きまぜていらっしゃるのを、(光源氏は)取ってご覧になって、たわいない歌だけれど、なるほど、ともっともに思われて、

古言(ふること)
古歌。
はかなし
たわいない。
解説

「取りて見給ひて」の主語は光源氏。紫の上の歌を、もっともだと思っている。

原文
命こそ係助強意絶ゆヤ下二終止と格助引用も係助強意絶えヤ下二未然め推量已然定めなきク連体世の格助体修常なら断定未然ぬ打消連体仲の格助体修契りを間助詠嘆

現代語訳命はいつか絶えるとしても、絶えるだろうが、無常なこの世の常とは違う、私たち二人の仲の約束なのですよ。

定めなき世
無常の世。
解説

光源氏の歌。「こそ〜め」は係り結び。命は絶えることがあっても、二人の仲は無常の世とは違って、いつまでも変わらないと誓っている。

現代語訳(光源氏が)すぐにもお出かけになれないのを、(紫の上が)「たいそう見苦しいことですよ。」とお促し申し上げなさるので、

とみに
すぐに。
かたはらいたし
(はたから見て)見苦しい。
そそのかす
せきたてる。促す。
解説

「とみにもえ渡り給はぬ」の主語は光源氏。紫の上のもとを離れがたく、なかなか出かけられない。

「そそのかし聞こえ給へ」は、紫の上が光源氏を促し申し上げるということ。「聞こえ」は作者から光源氏への敬意、「給へ」は作者から紫の上への敬意。

原文

現代語訳(光源氏が)しなやかで美しいお召し物で、言いようもなくよい香りを漂わせてお出かけになるのを、(紫の上が)お見送りなさるにつけても、まったく平静ではいられないことよ。

なよよかなり
しなやかだ。柔らかい。
えならず
何とも言えないほどすばらしい。
にほふ
よい香りがする。
見出だす
(家の中から)外を見る。
解説

「渡り給ふ」の主語は光源氏、「見出だし給ふ」の主語は紫の上。

「いとただにはあらずかし」は、光源氏を見送る紫の上の心は、まったく平静ではいられないということ。自分がたきしめさせた香をまとって出かけていく姿を見送るのである。

続き:若菜上(女三の宮の降嫁)③

源氏物語のほかの場面:桐壺①「いづれの御時にか」 藤壺の入内 若紫①「北山の垣間見」 須磨① 御法① 明石の君の苦悩① 明石の姫君の入内①

テスト予想問題

A 読み・語句

  1. 次の語の読みを現代仮名遣いで答えよ。
    ①夜離れ
    ②御衣
    ③理
    ④今宵
    ⑤頰杖
    ⑥硯
    ⑦古言

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    ①よがれ
    ②おんぞ(おおんぞ)
    ③ことわり
    ④こよい
    ⑤つらづえ
    ⑥すずり
    ⑦ふること(ふるごと)

  2. 次の語の本文中での意味を答えよ。
    ①年ごろ
    ②うちながむ
    ③らうたげなり
    ④などて
    ⑤あだあだし
    ⑥怠り
    ⑦とみに
    ⑧かたはらいたし
    ⑨そそのかす

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    ①長年
    ②もの思いに沈む
    ③いじらしい・かわいらしい
    ④どうして
    ⑤浮気っぽい
    ⑥過ち・気のゆるみ
    ⑦すぐに
    ⑧(はたから見て)見苦しい
    ⑨促す・せきたてる

B 文法・敬語

  1. 次の助動詞について、意味と活用形を答えよ。
    ①たきしめさせ給ふ(させ)
    ②なりぬめりしを(めり)
    ③思し続けらるるに(らるる)
    ④とだえあらむこそ(む)
    ⑤心づきなかるべけれ(べけれ)
    ⑥え定め給ふまじかなるを(まじか)

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    ①使役・連用形
    ②推定・連用形
    ③自発・連体形
    ④仮定・連体形
    ⑤推量・已然形
    ⑥打消推量・連体形

  2. 次の「こそ」の結びの語を、それぞれ抜き出せ。
    ①これより後のとだえあらむこそ
    ②命こそ絶ゆとも

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    ①べけれ
    ②め

  3. 次の敬語について、種類を答え、だれからだれへの敬意かを示せ。
    ①かの院に聞こしめさむことよ(聞こしめさ)
    ②言ふかひなげにとりなし給へば(給へ)
    ③そそのかし聞こえ給へば(聞こえ・給へ)

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    ①尊敬語。光源氏から朱雀院へ。
    ②尊敬語。作者から紫の上へ。
    ③聞こえ=謙譲語。作者から光源氏へ。給へ=尊敬語。作者から紫の上へ。

C 現代語訳・内容

  1. 「年ごろさもならひ給はぬ心地に、忍ぶれど、なほものあはれなり」について、①「さ」が指す内容を答えよ。②だれの気持ちか。

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    ①光源氏が自分のもとに通ってこないこと(夜離れが続くこと)。②紫の上。

  2. 「わが怠りに、かかることも出で来るぞかし」の「かかること」とは何か。また、光源氏は何が原因だと考えているか。

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    かかること=光源氏が(紫の上がいるのに)女三の宮と結婚すること。原因=自分の浮気っぽく気の弱い心の過ち。

  3. 「今宵ばかりは、理と許し給ひてむな」を現代語訳せよ。また、「理」とはどのようなことか。

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    訳=今夜ばかりは、しかたのないことだと許してくださいますね。理=婚儀の三日目の夜に、女三の宮のもとへ通わなければならないこと。

  4. 「またさりとて、かの院に聞こしめさむことよ」とあるが、光源氏は朱雀院が何を聞くことを気にしているのか。

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    光源氏が女三の宮のもとに通わず、宮を大切にしていないこと。

  5. 「まして理も何も」を、省略を補って現代語訳せよ。

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    まして(私などには)道理も何も(決めることはできません)。

  6. 「目に近く移れば変はる世の中を行く末遠く頼みけるかな」「命こそ絶ゆとも絶えめ定めなき世の常ならぬ仲の契りを」について、①詠み手をそれぞれ答えよ。②二人の仲が、それぞれの歌でどのようなものとして詠まれているか説明せよ。

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    ①前の歌=紫の上、後の歌=光源氏。②紫の上=目の前でたやすく移り変わってしまう、頼りにならないもの。光源氏=命が絶えることはあっても、無常の世とは違って変わることのないもの。

  7. 「見出だし給ふも、いとただにはあらずかし」を、主語を補って現代語訳せよ。

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    (出かけていく光源氏を、紫の上が)お見送りになるにつけても、(紫の上の心は)まったく平静ではいられないことよ。